学校弁護士、全国に配置へ いじめや虐待対応、300人方針:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)
9/23日付けの記事です。
つ、ついにスクールロイヤーが現実的に動き出すのですね!?
司法試験改革で弁護士を増員する必要性として、企業内弁護士と共にスクールロイヤーの創設が謳われていたのも懐かしい話です。
学校など教育環境の中で法律の専門家の意見が必要になる場面も多々あるでしょうから、その実現が達成されればと願います。
概要、運用形態
Wikipediaによると、スクールロイヤーとは
学校で起こるいじめや保護者とのトラブル等を法的に解決する弁護士のこと
とされています。
また、配置の仕方について、別記事によると
各地の教育事務所などに拠点を置き、市町村教育委員会からの相談を受ける
(日経新聞 2019年9月23日)
となっています。
スクールカウンセラーの様に、各校に派遣されて…という訳ではなく、教育事務所に拠点を置き、相談があれば学校側からアプローチする、という形の様です。
この様なスクールロイヤーの設置には、どの様なメリットないし期待がされているのでしょうか?
スクールロイヤーに期待されていること
スクールロイヤーが必要とされた理由として、記事では以下のものが挙げられています。
①いじめや虐待、不登校や保護者とのトラブルなどの法的なアドバイスが有効な場面で、迅速に法的アドバイスにアクセスできる
② ①を受けて教育現場における予防法務に資することができる
個人的に注目しているのは②の点です。
予防法務とは、予防医療の法律版の様なものです。
紛争が深刻化するよりも前に解決に当たることで、損害を未然に防ぐ、あるいは小さく済ますことを目指すというもの。
病気に限らず法的な問題というのも、初期に適切な対応を取ることでその後の被害の深刻化を防ぐことができます。「いじめられた被害者が自殺」などの最悪のケースになるのを、スクールロイヤーが関与することで防ぐなどの活躍を、個人的にも期待しています。
問題点、課題など
一方で、導入に対する懸念事項として以下のものが挙げられています。
①スクールカウンセラーの様に学校に常駐するものでなく、相談する為にはあくまでも学校側からのアクションが必要 ⇒ 学校側で「これは法律相談案件である」と判断する必要あり
②弁護士側が教育現場に精通しておらず、適切な助言を行えない可能性がある
③予防法務という観点が歪曲されて、紛争発生後に裁判沙汰になることを防ぐ為に事実がねじ曲げられてしまう事態が発生する可能性がある
個人的に、特に問題だと思ったのは「スクールロイヤー」と言いつつ学校に「常駐しない」という点です。てっきりスクールカウンセラーの様に学校のカウンセリングルームに常駐してるのかと思ったのですが…
常駐しなければスクールロイヤーの意味は半分以下に落ち込むと思っています。
予防法務とは、日常に散らばっている法律紛争の芽を摘んでおくことです。まだ紛争にもなっていない、顕在化すらしていない問題の芽に気づけるのは、弁護士という専門家、プロだからです。素人には気づけっこありません。そこの判断を専門家にさせないのならば、とても予防法務に資するとは思えませんね…
③については、決して起きてほしくないけど、どこかで起きそうな例として挙げました。
日本では訴訟を起こすだけでかなりのお金がかかりますから、なるべく訴訟にしない=和解などで解決を図ろうとするのだそうです。
それだけなら良いのですが、予防法務=事件の未発生こそが望ましいとしてしまうと、本来なら訴訟を起こすべき案件でも、弁護士が紛争化を忌避して「法律的には問題なし」とか「訴訟案件ではない」と断じてしまう可能性がある、という指摘です。
個人的な“理想のスクールロイヤー"
以下では、私が理想だと思うスクールロイヤーのイメージを綴っていこうと思います。
まずスクールロイヤーは学校に常駐します。保健室の先生やスクールカウンセラーの様に、いつでも誰でも会いに行ける存在です。
もっと言えば、心理士と弁護士両方の資格を持った人間にカウンセラーとロイヤーを兼務させるのが理想です。弁護士資格を持ち、法律トラブルに対しても現実的に動くことができ、かつ先見の明があるスクールカウンセラーの存在が一番です
そして生徒、先生問わず、積極的にコミュニケーションを取っていきます。方法は様々です。学校の雑用を一緒にやったり清掃活動に参加したり、学校行事には人手の一員として参加したりします。たまには法律に関する課外授業のようなモノやプチ相談会などもやってもいいかもしれません。
これらは勿論、予防法務として紛争の芽を探す為のファーストステップなのですが、目くじら立てて法的トラブルを探す、というのではなく、あくまでも現場に馴染んでいく為の行為です。
この様にして学校や生徒たちに馴染んでいくことで、相談されやすい環境を整えていきます。
また相談を待つだけでなく「あの子なんか様子が変だな」という風に弁護士自身が気づきやすくなり、必要に応じた話し合いを促すきっかけを作っていきます。又は、「あそこの保護者は少しモンペ気質があるな。これまでの経緯を踏まえて、次ココまで来たら業務執行妨害にあたりそうだな」など、状況整理をします。
そしてそれらを、必要に応じて教員たちと共有していきます。
現場の先生や生徒たちに溶け込むことで、紛争の芽に早期に気づける
これがスクールロイヤーにおいて一番重要な点だと、私は強く思います。
終わりに
今回はここまで。
本文でも述べましたが、スクールロイヤーの存在によって予防法務の(真なる)実現が達成されることをを期待しています。
長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。